COEIROINK(こえいろいんく)とは、シロワニさんが開発している無料の音声合成ソフトウェア、もしくは活動の総称である。ソフトウェアは2021年に公開され、ニコニコ動画やYouTubeなどの動画投稿サイトを中心にCOEIROINKを使用した様々なジャンルの動画が投稿されている。
概要
2021年に、音声合成ソフトの開発やニコニコ動画での活動を行っているシロワニさんによって個人で開発、リリースされたAIトークソフト。 一次創作のCVとして使用してもらうという目的で作成されている。不定期でアップデートを行っており、2024年11月現在もアップデートが続けられている。
COEIROINKv1の一部はオープンソースであった。GitHub上でv1.7.0のテスト版のソースコードが公開されているが、COEIROINKv2ではソースコードは公開されていない。
また、COEIROINK側は声を持たない公式キャラクターとその立ち絵を公開しており、好きな合成音声での声当てを行って良い事になっている。
特徴
ユーザーが音声ライブラリを「MYCOEIROINK」として作成できることが大きな特徴である。VOICEVOXのような文字単位での細かなイントネーションの調整も可能。また、VOICEVOXとは異なりキャラクターを1体ずつ、更には1スタイルずつ追加及び更新できることも特徴。
2023年9月のv2.1.1アップデートにて、文章単位での手描きによるピッチ調整機能が追加された。これにより、従来の文字単位でのイントネーションの調整よりもより細かい表現が可能となった。
Windows版とmacOS版、後発のLinux版が存在する。Windows版とLinux版ではCPU版とGPU版がある。GPU版はCUDAに対応したデバイスでのみ使用可能。
VOICEVOXと比較するとエンジンや音声ライブラリのサイズが大きく、COEIROINKv2.0.1ではWindows GPU版のダウンロードサイズが約2GB、展開後のサイズが約6GBとなる。また、音声ライブラリのサイズも大きく、MANA-v.1.2.0だけで約1.5GBになる。これはVOICEVOX全体のサイズより大きい。
COEIROINKはPythonでローカルホスト上に作成したAPIサーバーをGUI側から操作して動作している。そのため、GUIを使用せずにAPIを直接使用することも可能である。
主な出来事
2021年5月17日、COEIROINKの前身である『シロワニさんのつくよみちゃんトークソフト』が発表された。
2021年11月19日、初版であるCOEIROINKv0.0.1がリリースされた。
2021年12月25日、COEIROINK初の公式動画となる動画、『【COEIROINK】無料AIトークソフトを作ってみた』がニコニコ動画上に公開された。また、2日後の27日にYouTube上にも同じ動画が投稿された。
2022年2月26日、COEIROINKv1.0.0が公開され、音質が24Hz → 44.1kHzとなるなど、主要な変更が加えられた。
2022年4月2日、MYCOEIROINK機能が公開された。
2022年春、「ニコ動アワード2022春」にて、ニコニコ動画にアップロードされた動画、『【COEIROINK】無料AIトークソフトを作ってみた』が技術、工作ランキングの3位にランクインした。
2022年8月、COEIROINKの利用規約が緩められ、COEIROINKソフトウェアを使用してUTAU用の音声ライブラリを作成することも可能になった。
2023年4月22日、COEIROINK公式サイトのリニューアルが行われた。
2023年6月20日、COEIROINKがCOEIROINKv2として正式リリースされ、UIの一新などが行われた。
2023年7月11日、ソフトウェアの開発者であるシロワニさんがゲストとして月刊ニコニコインフォに出演し、COEIROINKについての話を行った。
2023年10月に、公式サイトのMYCOEIROINKページのMYCOE数が200を突破した。
2023年11月18日~20日の3日間、COEIROINK投稿祭2023が開催された。
2024年7月、COEIROINKのLinux版がリリースされた。
2024年7月5日~6日の2日間、非公式の、COEIROINK公式が参加するオンライン同人即売会「コエイロパレード2024」が開催された。
2024年11月16日~25日、COEIROINK投稿祭2024が開催予定である。
COEIROINKv2
2023年6月、COEIROINKv2がリリースされた。COEIROINKv1はVOICEVOXのUIを利用したVOICEVOX系のソフトウェアであったが、COEIROINKv2は独自開発のUIとなり、VOICEVOX系ソフトウェアではなくなった。
シロワニさんはCOEIROINKをv2にした理由について、以下のように発言している。
VOICEVOXは活発なOSSということもあり、開発速度がとても速く、私の能力の低さから、VOICEVOXのアップデートに追従するときにバグの混入させてしまうことが多々ありました。
また、APIに関しても、VOICEVOXはf0も含めてAPIで推論するのに対し、テキスト情報だけで推論するCOEIROINKでは、どうしても処理を最適化することが難しい状態でした。
今後の安定性・独自機能の開発速度向上・COEIROINKに最適化された処理を実現するために、このたびは独自UI・APIを導入する決断をとらせていただきました。
実際にVOICEVOXは開発が早く、VOICEVOX ENGINEのバージョン0.14.3が2月22日に公開された後、次期バージョンに当たるVOICEVOX ENGINEのバージョン0.14.4が3月28日に公開と、約1ヶ月で更新されており、COEIROINKの開発速度と比較してもかなり高速だと言える。
なお、開発は停止しているがCOEIROINKv1のダウンロード並びに使用は2024年11月現在も可能である。
COEIROINKv1とCOEIROINKv2ではプロジェクトファイルの拡張子が異なるが、後方互換を行っているため、v2からv1のプロジェクトファイルを使用することが可能である。
MYCOEIROINK
MYCOEIROINK(通称MYCOE)は、ユーザーが作成したCOEIROINK合成音声の総称、またはそれらの機能を指す言葉である。
MYCOEIROINKは公認のCOEIROINK合成音声とは異なりCOEIROINKソフトウェア上からはダウンロードすることができない。使用するにはそれぞれのMYCOEIROINK配布者のもとからダウンロードし、手動でインストールする必要がある。
ユーザーはMYCOEIROINKをいくつかのルールにしたがった上で作成、使用または配布することができる。配布されているMYCOEIROINKは、それぞれの利用のルールに従った上で他のユーザーも使用することができる。
MYCOEIROINK作成のためのツールとして、Google ColaboratoryにMYCOEIROINK作成用のノートブックが公開されている。手順に従いながらセルを実行するだけで作成できるため、プログラミングやディープラーニング等の知識がない人物でも音声ライブラリを作成することができる。そのため、録音の環境さえあれば音声ライブラリを一日で完成させることも可能である。また、叫び声などの特殊な音源も作成されている。
2024年11月4日現在、公式サイト上のMYCOEIROINKの配布者リストには365のMYCOEIROINKと合計1097のスタイルがあり、ユーザーはそれらを使用することができる。
公式キャラクター
COEIROINKのソフトウェアとは別に、公式キャラクターとしてキャラクターが存在する。キャラクターの設定は存在するが、自由に変更して良いことになっている。また、キャラクターに対して使用する合成音声も限定されておらず、使用者が決めることができる。なお、あくまでもキャラクターとして存在しているだけであり、これらのキャラクターはCOEIROINKソフトウェア上には存在、登場はしない。
それぞれのキャラクターの立ち絵は表情や服装の差分を含んだPSD形式で配布されている。また、ゆっくりMovieMaker4用の動く立ち絵も公開されている。
また、立ち絵としてではなく、アイキャッチなどに使える素材として、透過画像のキャラクターのミニキャラ素材が公開されている。
2024年11月現在、"主に"3体のキャラクターが存在する。
2023年の公式が設定したキャラクターの誕生日に当たる7月5日に公式が投稿した動画内で、それぞれのキャラクターの幼少期の立ち絵が使用された。その数日後、立ち絵がPSD形式で公開され、一般ユーザーも使用できるようになった。
2023年8月5日のCOEIROINK公式ライブにて、「システムメンテちゃん」と呼ばれるキャラクターが企画されていたことをシロワニさん自身が明かしている。また、同ライブ内にて、どこかで登場させたいといった旨の発言をしている。余談だが、公式キャラクターでないにもかかわらず、Twitter上にはシステムメンテちゃんのファンアートが投稿されている。
2023年10月21日のCOEIROINK公式ライブにて、同年8月5日のライブでの発言を有言実行する形で「システムメンテちゃん」のLive2Dモデルがお披露目された。過去のライブではナコの立ち絵が表示されていたが、シロワニさんにとっては『解釈違い』であったため、システムメンテちゃんは所謂”ガワ”として登場した。また、このような形でシステムメンテちゃんが登場したことによって、シロワニさんは『ソフトウェア上に登場させるのが難しくなった』とも語っている。
2023年12月より、システムメンテちゃんの利用規約が公開されている。これによってシステムメンテちゃんの二次創作を公式キャラクターと同じように行うことが可能となった。なお、この利用規約が閲覧できるページは他のキャラクターの利用規約と同じ配置かつ公式キャラクターと同じ「image-character」というフォルダ内のページにあるのだが、他のキャラクターと異なり相互にページ感を行き来できない構造になっている。言い換えれば、システムメンテちゃんのページだけ隠れている。
公認音声ライブラリ
以下は、ソフトウェア上からダウンロードすることのできる公認音声ライブラリの一覧である。2023年10月現在では、今後も追加される予定である。
2024年10月現在、12キャラクター、計66スタイルが利用可能。
これらの音声ライブラリはソフトウェアまたは公式サイトからダウンロードできる。また、公式サイトからは疑問文非対応の旧バージョンをダウンロードすることができる。
以前は各キャラクターがスタイルの数が増えるにつれて異なる話者として分割されていたが、最新版では統合されている。
音声ごとにいくつかのスタイルがあり、喜怒哀楽を表現できるものや声の雰囲気が変わるものなどがある。
また、一部のキャラクターの立ち絵がCOEIROINK公式から公開されており、それらを使用することができる。有志による立ち絵も存在する。
2023年11月、音声ライブラリ「クロワちゃん」が追加された際、ダウンロードサーバーの高負荷により音声ライブラリのダウンロードができなくなるアクシデントが発生した。同時に、X(Twitter)上での投稿が1000件を超えていた。余談だが、AIを用いたものでは「オホ声」が作成できる合成音声は過去に例がなく、業界としても初の試みである。
COEIROINK投稿祭
COEIROINK投稿祭は、COEIROINKのリリース記念に合わせて11月19日前後に行われるCOEIROINKの動画投稿祭である。参加者はニコニコ動画にCOEIROINKの音声が使用された動画を投稿する。
COEIROINKに関わる個人や団体である「シロワニさん」、「絵担当」、「つくよみちゃんプロジェクト」、「MANAさん(鹿仲茉菜)」、「おふとんP」、「Lusty*Kiss Production」、「AI声優」それぞれからの賞や、MYCOEIROINKを使用した動画への、金銀銅の3つの「MYCOE賞」、そして、総合優勝者に送られる「COEIROINK大賞」がある。ただし、つくよみちゃんプロジェクトは作品に優劣をつけないというポリシーがあるため、シロワニさんが審査の代理を務める。
2023年に第一回が行われ、2024年には第二回が行われる予定である。
この期間に合わせて、2023年の11/18(土)00:00~11/20(月)23:59の間は、ニコニコ動画の提供音声がナコ、レコ、カナタ(CVは公式動画に同じ)になった。また、2024年は11/16(土)00:00~11/19(火)23:59の間、提供音声が昨年同様に変わる予定である。
シロワニさんのつくよみちゃんトークソフト
シロワニさんのつくよみちゃんトークソフトは、シロワニさんが開発したトークソフトである。
COEIROINKの前身にあたり、つくよみちゃんの音声を生成することができる。つくよみちゃんの音声を生成する機能を含まないソースコード部分はApache-2.0 Licenseが付与されている。
このソフトウェアにはCOEIROINKのような比較的多機能なGUIはなく、PythonのTkinterで作成されたGUI上で動作する。
以前はGoogle Colaboratory上で動作させるためのリンクが公開されていたが、現在はリンクが無くなっている。これは、Google Colaboratoryのアップデートにより動作しなくなったためである。また、YouTube上に公開されていた動画も、現在は非公開となっている。
Twitter上に生成されたデモ音声があり、聞く事ができる。
ちなみに、Windows上での動作は依存関係の点で難しく、✕という表記をされている。が、明確に非対応とは表記されていない。
VOICEVOXとの関係性
最新版のCOEIROINKのバージョンはv2となり独自開発のUIを使用しているが、COEIROINKv1はVOICEVOXのUIを使用しており、VOICEVOXのAPIと互換性のあるAPIを使用していた。そのため、v1系のCOEIROINKはVOICEVOX系ソフトとのマルチエンジン機能に対応しているが、2024年11月4日現在、v2ではAPIの仕様が変わり、公式には対応していない。しかし、非公式(公認)のブリッジを使用することでマルチエンジン機能を利用することができる。
また、VOICEVOXのUIを共有していただけで、音声合成の仕組みは別のものを使用している。
なお、COEIROINKの開発者のシロワニさんとVOICEVOXの開発者のヒホは知り合いであり、知識の共有を行うこともあるようである。
その他
- COEIROINKの名前の由来は「声色」(こわいろ)と、塗料などの「インク」の単語を繋げたもの。また、「こえいろ」という読み方が辞書的に正しい読み方でないことは開発者も認識しており、読みの"かわいさ"からこのようにしているらしい。
- COEIROINKの公式ページや立ち絵、公式イラストなどは、ソフトウェア開発者であるシロワニさんが描いたものではない。開発やプログラミング、公式の投稿している動画制作を行っている人物(シロワニさん)とイラストを描いている絵担当の人物(よく"COEIROINKさん"と表現される)は別の人物である。が、シロワニさんとしてはこれを主張する気はなく、「シロワニさんは絵が上手」と言われても構わないらしい。また、「『シロワニさんは絵が上手』と言っている人物をみつけても指摘しないように」というようなことも語っている。
関連項目
- VOICEVOX
- ゆっくりMovieMaker
- 音声合成
- Python
脚注
注釈
出典
外部リンク
- COEIROINK 公式ページ
- COEIROINK YouTubeチャンネル
- シロワニさん ニコニコ動画
- シロワニさん⭐️COEIROINK®︎🌙@shirowanisan Twitter X
- シロワニさんの機械学習ブログ

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