ナガスクジラ科(ナガスクジラか、Balaenopteridae)は、ヒゲクジラ類の分類群で、哺乳綱鯨偶蹄目に属する科。
分布
インド洋、大西洋、太平洋
多くの種は夏季は高緯度地域に分布し、冬季になると繁殖のため低緯度地域へ移動する。
形態
最大種はシロナガスクジラで最大全長33.6メートルで本科やクジラ目のみならず哺乳綱最大種。最小種はミンククジラで最大全長10.7メートル。オスよりもメスの方が大型になる。体形は細長い。下顎はやや上方へ湾曲し、上顎の先端よりも下顎の先端の方が前方へ突出する。喉から腹部にかけて畝が入る。
分類
現生は2属9 - 10種であるが、他に5 - 6の絶滅属が属する。起源はおそらく後期中新世とされ、当時の化石記録からはこの時点でナガスクジラ属が現れていた事が判明している。ザトウクジラ属に関しては化石記録が乏しく、その起源は不明である。またこの科は側系統であり、コククジラ科と併せて単系統を成す。
- †Plesiocetus(†は絶滅)
- †Idiocetus
- †Megapteropsis
- †Burtinopsis
- †Palaeocetus
- †Notiocetus
以下の現生種の分類・英名は、ニタリクジラ・カツオクジラを除いてCommittee on Taxonomy (2023) に従う。ニタリクジラ・カツオクジラについては田島・山田 (2021) に従って別種とした。和名は、ライスクジラを除いて川田ら (2018) に従う。
- ナガスクジラ属 Balaenoptera
- Balaenoptera autorostrata ミンククジラ Common minke whale
- Balaenoptera bonaerensis クロミンククジラ Antarctic minke whale
- Balaenoptera borealis イワシクジラ Sei whale
- Balaenoptera brydei ニタリクジラ Bryde's whale
- Balaenoptera edeni カツオクジラ Eden's whale
- Balaenoptera musculus シロナガスクジラ Blue whale
- Balaenoptera omurai ツノシマクジラ Omura's whale
- Balaenoptera physalus ナガスクジラ Fin whale
- Balaenoptera ricei ライスクジラ Rice's whale
- ザトウクジラ属 Megaptera
- Megaptera novaeangliae ザトウクジラ Humpback whale
分子系統
2019年の分子系統解析では、コククジラがナガスクジラ科(ナガスクジラ属)に内包されることが明らかになった。またザトウクジラもナガスクジラ属に内包される。
生態
海洋に生息する。
食性は動物食で、甲殻類、魚類などを食べる。群れている獲物を口を大きく開けて海水ごと呑み込み、髭で獲物だけを濾しとって食べる(エンガルフ・フィーディング)。摂餌の際に突進しながら獲物を呑み込むものをランジ・フィーディングといい、時には海面まで獲物を追いかけて前半身が海中から飛び出すこともある。カツオクジラ類は立ち泳ぎをしながら海面で口を開け、獲物が口の中に入ってくるのを待つ方法(立ち泳ぎ採餌)をとることがある。獲物が分散している場合は周囲を泳ぎ回り獲物を密集させてから捕食することもあり、ザトウクジラはその際に気泡を発生させて獲物を追い込む(バブルネット・フィーディング)ことが知られている。
繁殖形態は胎生。冬季に交尾し、妊娠期間は11-12か月。1回に1頭の幼獣を産む。授乳期間は約6-12か月。
人間との関係
捕鯨により生息数は激減している。しかし生息数の推移に関する信頼できる観測例が無いため、詳細が不明な種もいる。
脚注
参考文献
- 大隅清治監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科2 海生哺乳類』、平凡社、1986年、70-73頁。
- 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』、講談社、2001年、12-16、166-168頁。
- 『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館、2002年、110、112-113頁。
関連項目
- クジラ目
- ヒゲクジラ亜目



